息抜きに むかしばなしをどうぞ。

毎日 毎日 テレビでもネットでも コロナウイルス関連の話題ばかりなのに
明確な検査や治療法も打ち出されず 後手後手に回る対応に閉塞感が強くなりますよね。
ちょっと息抜きに 昔ばなしをひとつ。
これは 人間が自分たちに危機が迫ったとき 何を考えて何をするのか?
時々 そこには 思い違い があるよ。
そんな おはなしなのかもしれません。
◎ジャガーと女の子のはなし
深い森のなかに 人間の子どもの泣く声が響いていた。
森の動物たちは聞きなれない鳴き声に 何事かと怯えていた。
ジャガーも ただ事ではない大きな声に耳を澄ましていると
近くの木の枝から カケスがこんな話を聞かせてくれた。
向こうの川岸に人間の子どもが捨てられてるよ。
かわいそうに ずっと泣きっぱなしなんだ。人間ってひどいことするよね。
ここでは初めてだけど 向こうの森でも捨てられた子どもを見たことがあるよ。
ジャガーは カケスに訊ねた。
捨てられたって その子どもはいらないっていうこと?
カケスは 人間たちの暮らしてるところでは 神さまがいろいろ はからってくれるようにって
ときどきこうやって 子どもを贈り物に差し出すらしいんだ。
神さまはこんなこと望んでないのにね と答えた。
そんな話をしている間に 子どもの声が聞こえなくなった。
カケスが 子ども 誰かに食べられちゃったかな? と 悲しそうに言うと
ジャガーは黙って歩き出した。
川岸までくると 人間の女の子が泣きつかれて眠っていた。
ジャガーは女の子に近づくと やさしく咥えて森へと引き返した。
女の子は目を覚ましたが あまりの怖さに固まっていた。
ジャガーは自分の棲み処までくると 女の子をそっと地面におろした。
女の子は恐怖に満ちた目で ジャガーを見ながら
私を食べる神さまは あなたなの? ジャガーにそう訊ねた。
ジャガーは そう教えられて ここに連れてこられたの? と
できるだけ女の子を怖がらせないように やさしく声をかけた。
女の子は黙ってうなづいた。
ジャガーは きみは神さまを見たことがあるのかい? 女の子に訊ねる。
女の子は首を振った。
じゃあ きみを連れて来たおとなたちは 神さまを見たことがあるのかな?
女の子は わからないけど… きっと知らないと思うの…。
でもね 神さまの言葉を聞ける人がいて その人なら神さまを見たことあるのかも。
そんなことを話してくれた。
ジャガーは それじゃあ きみを連れて帰ってあげるよ。
お父さんとお母さんのところにね。
そういうと 女の子に背中に乗るように促した。
ジャガーは女の子を背中に乗せて 森のなかを風よりも早く走り抜けた。
すぐに人間たちの家が見えてくる。
人間たちもジャガーをみつけて 大きな声で叫び出した。
神さまが怒ってる! 生贄が気に入らなかったんだ!
ジャガーはかまわず 人間たちの真ん中に進むと 女の子を背中からおろした。
そして 人間たちに向かって 静かにこういった。
ぼくは神さまじゃないし 本当の神さまは人間の子どもを欲しがったりしないよ。
人間だけじゃなくて 誰の命も欲しがったりしないんだ。
そして女の子に お父さんとお母さんのところに帰りな そういって森に帰ろうとした。
ジャガーを呼び止める声がした。
お待ちください。おまえは神ではないなら なぜ生贄を返しにこられた?
神に背く悪魔なのか?
ジャガーは呆れた顔で その男にこう言った。
あなたが神さまと話せるっていう人かい?
男はうなづく。
こんなに小さな子どもを親から取り上げて 森に置き去りにするなんて人間は悪魔なのかい?
神さまはこんなことを喜んで きみたちに何か与えてくれるとでも思うのかい?
人間が弱い生き物なのは知っているよ。牙も爪も毛皮もないからね。
だから神さまは人間に知恵や自由な手を与えてくれたんじゃなかった?
あなたが神さまの声を聞けるなら なぜ自分が森に行かなかったの?
そんな思いやりや潔さも持たないで 神さまの声は聞こえないだろ?
それだけ言うと ジャガーは風よりも早く 森の中へと帰っていった。

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