自分ってなに?っていうはなし。

よく訊かれて いちばん答えに困るのが あなたは何をしている人ですか? とか 何者ですか? という問いです。
ブログのプロフィールには ストーリーテラーと書いていますが そんな職業ないしw
確定申告ではカウンセラーと書いてるし かといって個人事業主登録はしていないし。
なんでかっていうと 青色にするほど経費がかからないからです。
それでも 今回みたいに給付金だの貸し付けだのの申請の時には そういう肩書みたいなものがある方がいいのかなと
考えたりしています。
世の中で 自由業 っていって真っ先に言われるのが やくざは自由業だよね?w っていう嘲笑です。
まあ やくざな稼業といえばそれまでなので 別にかまわないんですけどね。
そんなこんなで 今日はウマと旅人のおはなしです。
私も いつまでたっても この旅人みたいなものなのかもですが。
〇旅人とウマのはなし
ひとりの男が旅をしていた。
この旅には目的地はなく どこで終わるのか男にもわからなかった。
いくつもの山を越えて 森を抜けて 広い草原にたどり着いた。
ちいさな茂みの陰に腰をおろして 男はぼんやり ここにたどり着く前 草原の入り口で出会った大きなオスのムースの言葉を思い出していた。
少し離れたところから ムースはじっと男をみつめて
きみはメディスンマンかい? と訊いてきた。
男は 自分が何者なのかわからないんだ… と素直に答えた。
だから旅をしているのかい? とムースに問われても
男は そうなのかもしれない。でも 旅をしていても自分が何者なのかわからないんだ…男は心細そうに答える。
周りを見なければ旅をしても意味ないよ。同じ場所に居続けるのと同じじゃないかな?
男をちらっと見ながら そう答えると 良い旅を そう言い残して歩き去ってしまった。
男はここまで歩きながら ムースの言葉を考え続けていた。
周りを見る? 見ているからここまで歩いてこられたんじゃないのか?
ぼくの目は見えているのに…。
目の前の草が風に吹かれるのを見ながら ぼんやりしていると そのまま眠ってしまった。
男は大きな地響きで目を覚ました。
地面が鳴っている。今まで聞いたことがない 大きな響きが近づいていた。
音がする方に目を向けてみると 黒い塊が勢いよく近づいてくる。
朝の霧が晴れるにつれて それがウマの群れだとわかった。
ウマの群れは草原で立ち止まり それぞれが思い思いに草を食み始める。
男はまた ぼんやりしながら その景色を見ていた。
やっぱり ぼくの目は見えている。今 ウマたちを見ているじゃないか。
男は そんなことを考えていた。
群れのなかから一頭のウマが 男に近づいてきた。
ウマは男にムースと同じ質問をしてきた。
やあ きみはメディスンマンかい?
男は ムースに答えたのと同じように ウマにも素直に答えた。
自分が何者なのかわからない だから旅をしている。
ウマは不思議そうな顔をして 男にこう言った。
ここに来るまで 他の誰かにメディスンマンかって訊かれたことはないの?
男はムースとの出来事をウマに話した。
ウマは そうかあ。それでもまだ 気がつかないのかい?
やっぱりきみの目は何も見ていないんだね。
そういって 少し寂しそうな顔をした。
男にはムースの言葉も ウマが言いたいこともわからない。
どうして寂しそうな顔をしたのかも まったくわからなかった。
ウマは自分を憐れんでいるのか? それはどうしてなのか?
そのままの想いをウマにぶつけた。
きみの言葉も ムースの言葉も ぼくにはわからないんだ。
きみにはぼくが可哀想な男に見えているのかい?
ウマは男の目をじっと見ながら こんな話をしてくれた。
ぼくやムースには きみはメディスンマンに見えたのさ。
でも きみは 違う って答えたよね? 旅をしても何もわからないって。
きみの心を迷わせているのは きみ自身でしかないんじゃないかな?
きみが旅に出るのを許した長老も きみがメディスンマンだから許したんじゃないのかい?
自分が見えない者には 周りの景色も 自分に起きてることも 何も見えてはこないさ。
男はウマに訊ねた。
きみは自分がウマだってわかってるっていうのかい?
ウマは笑って それを知らなかったら 生きていくことはできないじゃないか。
自分を知るからこそ ほかの誰かとの関わり方もわかるのさ。
でもね ぼくがウマだからって ほかの生き物たちと変わらないんだよ。
見た目や食べ物や生き方が違っても こうやって話せる心の世界は みんな同じだよ?
それは目を開けていても 見えないものだけどね。
さようなら 若いメディスンマン。 良い旅をね。
そういうと ウマは群れのなかに紛れていった。
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