クマの親子のはなし。

クマの親子の話
ある冬の夜 ちいさな穴のなかで 二匹のクマの赤ちゃんが生まれました。
お母さんは大切に子どもたちを温め やがて春になります。
子熊たちもお母さんと穴の外に出てきました。
お母さんは森の友だちに 小熊たちを紹介します。
カケスもカラスもワシも うさぎもアナグマもヤマアラシもヤマネコも みんなが子熊たちを歓迎してくれました。
うさぎは子熊に声をかけて お母さんのいうことをよくきくのよ? あなたたちを必要としている 弱い生き物がいるの。
まだ あなたたちは会っていないけど と言いました。
子熊たちは弱い生き物? 生き物に弱いとか強いとかあるの?
そうお母さんに訊ねます。
お母さんはこんなふうに答えました。
私たちには厚い毛皮や大きな爪 硬い物でも食べられる強い歯があるでしょう?
うさちゃんには よく聞こえる大きな耳があるし 鳥たちは飛ぶことができるじゃない?
ヤマネコさんは木の上に身を隠せるし ヤマアラシくんはトゲを逆立てて自分を守れるわよね?
そういうことを なにも出来ない生き物もいるのよ。
子熊たちは ふーん と つまらなさそうに相槌をうつだけでした。
やがて春から夏になり 川で水遊びをしたり ベリー狩りをしたり楽しい季節がやってきます。子熊たちも森の友だちと遊びながら たくましく育っていきました。
そんなある夏の満月の晩のことです。
見たこともない二本足の動物が森にやってきました。
身体には変な物を巻き付けていて 顔には毛皮もありません。
子熊たちは あれが弱い生き物なの? とお母さんに訊ねます。
お母さんは あれはね 人間っていう生き物なのよ。
私たちのなかで いちばん弱いの。
だから 森にいろいろ習いにくるのよ と子熊に教えました。
習うってなにを? 狩り? それとも穴を掘ること? と子熊はさらに訊いてきます。
お母さんは そうねえ なぜ それをするのか? とか どうしたら 森のみんなと一緒に生きていけるか? そういうことかしら? と答えます。
誰が教えてくれるの? 子熊がそう訊ねると お母さんは その役割は私たちクマなのよと子熊に教えてくれました。
お母さんがやることを よく見ていてね。
そういうと お母さんは静かに人間のそばに近寄っていきました。
人間はお母さんの姿を見ると 森の奥へと逃げ出してしまいます。
お母さんは子熊たちのもとに戻ると 笑ってこう言いました。
まだ あの人間には早かったのかしらね。おとなになるのは。
子熊たちは おとなになるって 当たり前になるんじゃないの?
あの人間はまだ子どもなの?とお母さんに訊ねます。
お母さんは 子熊にこう教えました。
私たちは森のなかで みんなで生きて行かないといけないでしょ?
人間たちは弱いから 火を焚いたり道具を使って 自分達の棲み処で生きているの。
でもね 森から離れては生きていかれないから 私たちのところにやってくるのよ。
みんなと一緒に生きていくには どうしたらいいのかって習いにね。
その答えをみつける手伝いをするのが 私たちクマなのよ。
お母さんが歩いたあと あなたたちは足跡をたどってくるでしょ?
お母さんは あなたたちに正しい道を示さないと あなたたちを危険な目に遭わせちゃうじゃない? 人間たちも同じことよって教えるの。
あなたたちも もう少し大きくなったら この役目を継いでいくことになるわ。
だからね お母さんは あなたたちに何が正しくて 何をすると道に迷うのかを教えておかないといけないのよ。
そういって 子熊のきょうだいを抱きしめました。
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