コヨーテのメディスン

色々な むかし話にも登場する人気者 コヨーテのメディスンのお話です。
コヨーテを文字で表記するとき Coyote なのか coyote なのかで 持っている意味が変わります。
文中で表記するときに 大文字の C で始まる表記であれば それは精霊としてのコヨーテを表します。
コヨーテは北米に広く棲んでいることもあって たくさんの部族に多くの話が残っているわけです。
コヨーテのメディスンは 好奇心 というものです。
別名 愛すべき おバカさん というのは この旺盛な好奇心ゆえに 興味を持った物をスルー出来ずに
時にはトラブルを起こしたり 自分が痛い目に遭ったりと 何かしらの出来事を起こすことに由来します。
賢くてすべてを卒なくこなすタイプではなく 失敗したり 周りに笑われたりすることが多いのもコヨーテです。
この コヨーテの失敗や無謀ともいえるほど 好奇心に忠実に動くことは 私たちに気づかせる何かを持っていると云います。
なので 多くの部族はコヨーテをトリックスター 私たちに何かを気づかせるための精霊として大切にしています。
このコヨーテが登場するむかし話は 聞き手が気づかされること 同じ物語に出てくる別の動物が気づかされることなど
とても多くのことを教えてくれるものです。
この コヨーテのメディスンがいい方向に働いているとき 外の世界はとても魅力的に輝いていて 知りたいこと に溢れています。
その 知りたいこと を どこまでも追求したい気持ちも湧いてきますし 新しい発見をすることも多いでしょう。迷いがなく気持ちが求めるままに 知らない分野にでも首を突っ込むことも躊躇はしません。それが 相手の気持ちを考えない かなり強引な行動につながることもあります。忖度というものがないんですね。なので 突っ込まれる側も本音と本気を出さざるを得なくなります。この本音を引き出すこと 隠そうとした何かに気づかされること。これがトリックスターとしてのコヨーテの本質なのです。
コヨーテは私たちに学ぶ機会を与えてくれます。その学びには 間違う 揉める ケンカをする 意地悪をする などの 出来事が必要な場合があって 悪気なく そういったことを引き起こしても けして憎まれることがないのが コヨーテのメディスンでもあります。
どうして嫌われたり憎まれたりしないのか? ですが コヨーテに悪気はなく 最後には ごめんね っていう素直な言葉を伝えることもありますし 何かを教えられたら ありがとう という言葉を伝えます。好奇心を抑えられないのは本能ですが それが満たされて何某かの結果が出たとき それを まっすぐに受け止める謙虚さも持ち合わせているからなのです。
もし この好奇心旺盛なチャレンジャーのメディスンが上手く働かないことがあるなら コヨーテのなかで好奇心よりも体裁の方が勝っているという時です。こんなことをしたら バカだと思われるかもしれない。どうせ 自分がやったところで誰も相手にしてくれない。何か行動を起こすよりも前に 動くことを躊躇う 思考 が勝っている場合です。これを私たちは 分別 と呼んだりもしますよね。
ある意味では分別がない 常識が無いというのも コヨーテのメディスンの一部なのは確かです。難しいのは この分別だとか常識に捕らわれた時に コヨーテらしさが失われるという矛盾を抱えた 珍しいトーテムなのかもしれません。
もうひとつ コヨーテのメディスンが健全に機能していないとき コヨーテ自身も知りたいことを知った 教えてもらった という気持ちから離れています。そこで起きてくるのは ただ自分の欲求だけを通して 相手に対しての礼を欠く ということです。
そこには お互いの気づきところか 気まずい空気や怒り コヨーテへの蔑みしか残りません。
コヨーテの最大の魅力である 知らないことを知りたい純粋さと 教えてもらえたことへの感謝 謙虚さがあってこそのメディスンだと覚えておいてくださいね。
カワウソのはなし
みんなが水を飲みにくる穏やかな川に カワウソたちの村がありました。
ここにくる動物たちは カワウソとのおしゃべりを楽しみにしています。
オオカミのお母さんの子育てのグチを聴いたり クロクマが木から落ちた失敗談を聞いて一緒に笑ったり。
いつでも穏やかな時間が流れています。
大きな灰色熊やクーガーでさえ カワウソとおしゃべりをして 水を飲んで楽しい時間を過ごすのを楽しみにしていました。
カワウソのそばにトンボがいます。
カワウソはトンボが本当はドラゴンであることを知っていました。
でも トンボにその答えを教えることはありません。
あなたが何か思い出すことがあれば きっともっともっと楽しくなるんじゃない?
そんなアドバイスを日々繰り返すだけでした。
それをコヨーテは黙って見ています。
カワウソのやつ どうして あんたはドラゴンなんだよって教えないんだろう?
親切なふりしてイヤなやつだなあ。
そんなことを考えていました。
そうだ! カワウソのやつの いいひと面をひっぱがしてやろう!
そしたら みんなにも あいつがいいやつじゃないってわかるしな。
コヨーテはカワウソの近くまで 何食わぬ顔でやってきました。
やあ カワウソちゃん。 あら コヨーテくん 久しぶりね~。
カワウソはニコニコあいさつを返してくれますが それ以上は何も話しかけてはきませんでした。
なにか警戒してるのかな? なんで何も訊かないのかな?
コヨーテは水を飲みながら考えます。
その間 カワウソは岩の上に 魚を一列に並べていました。
なにやってんだ? コヨーテはカワウソに訊ねます。
これ? これはね~ お祭りの準備なのよ。 とカワウソは答えました。
お祭り? おまえたちが? そういってコヨーテは笑いだしました。
なんのための祭りなんだよ? というコヨーテに カワウソは答えます。
ここにきてくれるみんなが 毎日楽しく暮らせるようにっていうお祭りよ。
カワウソはニコニコ答えます。
コヨーテは二ヤっと笑って ここぞとばかりにカワウソに言いました。
でもさ~ おまえたちって ここで相談してるやつらの答えを知ってても
教えてやったりしないじゃないか。トンボにだって何も教えてないじゃないか。
それなにの祭り? そんなことより教えてやる方が親切だろ?
カワウソは コヨーテの話に 声を出して笑いだしました。
コヨーテくんは知りたがりさんだもんね。なんでも早く知りたいもんね。
そういって笑っています。
コヨーテは 知りたいことを すぐに知った方がいいだろ?
トンボだってドラゴンに早く戻った方がいいじゃないか。
カワウソはこう答えました。
わたしは答えなんか知らないわ。みんなのお話を聞いて寄り添うだけよ。
もしかしたら そのなかに なにか気づけることがあるかもしれないけど 私がみんなの答えを知ってるわけないじゃない?
トンボさんがドラゴンに戻るとしても いつ なにがきっかけで気がついたかで 戻る姿は違うでしょ? 私が戻す役割じゃないのよ?
だからね みんなの新しい明日が 今日よりもいい日になるように 魚を並べてお祭りをするの。ワカンタンカに みんなの願いが届くようにね。
そう話すと またせっせと魚を並べ始めます。
コヨーテは よくわからないけど 手伝うよ。
そしたら ぼくもなにか気づけるかな?
そういってカワウソと並んで 魚を並べていきました。
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